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伊賀プロレス通信24時「日常茶飯事(ちゃはんじ)」

略して「イガプロ!」、三重県伊賀市に住むプロレスファンのプロレスブログ!

三沢光晴vs小川直也、禁断の遭遇!暴走王を封じ込めた"王道の理論"

三沢光晴vs小川直也
 2001年4月18日 ZERO-ONE日本武道館大会で三沢光晴が力皇猛と組み、小川直也と村上一成のUFO組と対戦、三沢と小川の馬場イズムの三沢、猪木イズムの小川の遭遇だったこともあり、禁断の遭遇と言われ、注目の一戦とされた。

 きっかは同年3月2日、両国国技館で行われたZERO-ONE旗揚げ戦、三沢は秋山準と組み橋本真也、永田裕志と対戦。試合は三沢が投げ放しジャーマンで橋本を降したが、試合後に小川がエプロンに上がり「橋本!だらしねぇ試合してんじゃねえよ!この野郎!三沢(ここで)組んでもらおうじゃないか!」とマイクアピールすると、三沢は小川にエルボーを放ち、橋本側のセコンドについていた藤田和之も秋山につかみかかるなどリング状はカオス状態となった。

 三沢がなぜ小川にエルボーを放ったのか、三沢はZERO-ONE参戦にあたり、小川に対して「ウチ(NOAH)に絡んだら、ただじゃおかない」と釘を刺しており、また「マイクをオレに振ってはいけないの!相手の発言は殺しちゃんだから!」とコメントしていたとおり言葉のプロレスを何よりも嫌っていたことから、三沢にしてみれば小川に放ったエルボーはハチの一刺しに過ぎなかったのかもしれない。だが三沢が小川に放ったエルボーが思わぬ波紋を呼び、マスコミは三沢vs小川の実現に期待をかける。だが三沢は試合後に「向こうは向こうのやり方でやればいい、こっちはこっちのやり方でやるから、それを相手に押し付けようとしなくてもね、(UFOとの今後に関して)断じてない」と断言、小川戦実現に否定的な立場を取った。三沢にしてみれば"うかつに小川を相手にすれば背後にいる橋本のペースにハマってしまう"という考えだったのかもしれない。

 しかし橋本が日本武道館大会開催に当たってNOAHに対して「メンバーを用意したから対抗して欲しい、誰が出るかは三沢に任せます」とNOAHの選手を空欄にしてカードを発表すると、橋本の仕掛けに対して三沢は「人任せだろう!」と不快感を示す。この頃のNOAHは旗揚げ戦ではファイティングTV SAMURAIで放送されていたこともあって縛りはなく、簡単に他団体に選手に貸し出すことは出来たが、4月からは日本テレビによる独占放送も開始しており、日本テレビの承諾なしで他団体に上がることは出来なくなってしまっていた。しかし三沢は小川にエルボーを放ったのは自分だったこともあって、自分の撒いた種を自分で刈り取るために出場を決意、15日有明コロシアムで高山善廣を破り初代GHCヘビー級王者となった三沢はZERO-ONE武道館大会に出場する選手を発表、旗揚げ戦では秋山準、大森隆男、高山、丸藤など主力を出したが、武道館では旗揚げ戦に出場した丸藤を含め中堅からは本田多聞、井上雅央、若手から力皇猛、デビューして3ヶ月目の杉浦貴を選抜、そして三沢は小川&村上のUFOコンビに対してデビューして1年半目ながらも、森嶋猛とのタッグで秋山に宣戦布告し自己主張し始めていた力皇をパートナーに抜擢した。小川や橋本にしても、"なぜNOAHの主力を出さずに中堅・若手なんだ!"と不快だったと思う。だが三沢の選んだ人選は後に大きな意味合いを残すものになるとは小川や橋本も知る由もなかった。また日本テレビも三沢らNOAH所属選手が出場する試合に限って「NOAH中継」で放送することを条件にしたことで、三沢出場にGOサインが出された。

 第1試合では丸藤はヘビー級転向を宣言したばかりの高岩と対戦し、不知火狙いの丸藤を高岩ドリラーで突き刺した高岩がラリアットで勝利も、第3試合で行われたアレクサアンダー大塚vs杉浦貴は、PRIDEでマルコ・ファスを破りMMAでは実績を残しているアレクを、デビューしたばかりの杉浦がレスリングで圧倒する。アレクもレスリング出身だが、杉浦はアマチュアレスリングの全日本選手権グレコローマン82kg級優勝および国体で3度優勝の実績を誇るレスリングエリート、アレクに対して格の違いを見せつける。自身のプライドを傷つけられたのかアレクは杉浦に頭突きを放つが、逆に自身の眉間を割ってしまい杉浦に競り負け、最後はアレクが足極め腕固めで強引に勝ったものの、内容では杉浦が圧倒、試合後にアレクが「三沢ー。デビュー4ヶ月の新人につきあわせるんじゃあねえ」とアピールするも、その新人に散々な目に遭ったアレクに観客はブーイングを浴びせる。

 セミでも橋本が安田忠夫をと組んで多聞&井上と対戦も、多聞が安田にデットエンドで投げれば、井上も橋本のキックを正面から受けきり、橋本と安田をアルゼンチンバックブリーカーで担ぐなど怪力ぶりを見せつける。試合は橋本が三角絞めを決め、井上を脱臼させたことで試合はストップとなるも、井上の評価を上げる結果となってしまうなど、内容を残したNOAHに言いようにされてしまう。

 そして注目のメインである三沢&力皇vs小川&村上は、開始直前から三沢と小川は睨み合い視殺戦を繰り広げる。だが力皇が先発を志願し三沢も託すと、力皇を格下と見なしたのか小川は激昂し三沢を挑発も、三沢は小川の挑発には付き合わず、コーナーに下がる。
 試合開始となるが小川ではなく村上がいきなり力皇に襲撃をかける、小川にしても格下相手に自分は出る幕がないとして村上に任せたのだろうが、村上がパンチの連打を浴びせるも、パンチを受けきった力皇はがぶってコーナーに押し込み、上手投げからぶちかましで村上を吹き飛ばす。村上も後年「あの人はまるで戦車。自分も相撲をやってましたけど、ガーンとかまされ"こっちが胸出してないのに反則じゃないの?"ぐらいの勢いがあった」と語っているように、三沢が自身のポリスマンとして力皇を抜擢した理由は前頭4枚目と大相撲で幕内を経験している潜在能力と、横綱や大関クラスと対戦し曙の張り手もまともに喰らった経験もある打たれ強さを買ったからだった。その後も村上は顔面にジャブを放つも、相撲の張り手を受けている力皇は平然と受けきり村上を挑発、逆に突っ張りに連打で押し返し、がぶってから自軍に押し込んで三沢に交代する。
 村上は三沢にローで牽制も、三沢は片足タックルからグラウンドを仕掛け。村上は膝十字で捕らえるが、三沢は慌てずロープに逃れ、パンチを仕掛けてくる村上の頭部を押さえ逃げられない状況にするとエルボーを連打、その数発かは鼻に入れており、後で村上の鼻骨が折れていたことが発覚する。
 村上は小川に交代するが、ここでも三沢は小川のペースに付き合わず力皇に交代、自分との対戦を避ける三沢に小川は挑発するも、力皇がコーナーに押し込んで張り手を浴びせ、小川のグラウンド狙いも足腰の強さで撥ねのけ、キックやパンチも平然と受けきるなど、さすがの小川も思わぬ強敵が現れたことで表情が変わる。力皇が胴タックルを狙ったところで小川がキャッチするとSTOを決めて、やっと自身のペースに引きこめたかと思えば、三沢がエルボーの連打でカット、小川のペースにはさせない。
 やっと三沢vs小川となるが、三沢がミドルキックで牽制すると、小川は左ハイキックを狙うが、三沢は左のエルボーでブロック、小川は片足タックルからグラウンドを狙うが、三沢は体を引いて潰すと首根っこを押さえてフロントネックロックに捕らえ、レスリング時代の引き出しを出して小川の動きを封じる。
 小川はやっと背負い投げから横四方に捕らえてマウントを奪いパウンドを落とすと、三沢がガードしているところで力皇がぶちかましでカット、力皇はそのまま小川を場外へ排除して捕らえ、その間に交代した村上を三沢はジャーマン気味のバックドロップ3連発で3カウントを奪い勝利、小川は試合後に三沢を襲い掛かるが、セコンドにいた丸藤、杉浦らNOAH勢が駆けつけて小川を袋叩き、この事態の慌ててZERO-ONE勢も仲裁する。小川もマイクで「三沢、数さえ揃えれば勝てると思ってるんじゃねぇよ!今度まとめて勝負してやるからな!」と叫んで退場となるが、内容的にも小川は自分のペースにはさせてもらえず、三沢と力皇に美味しいところ全てを持っていかれて完敗だった。

 小川はバックステージインタビューで「こうやってボコボコにされたのは久しぶりだね、NOAHには触れちゃいけないイメージがあると、蓋が開けてみれば全然違うじゃん。びっくりだよ」と答え、後年村上も「新日本の人たちみたいに闘志剥き出しじゃないんですけど、やることがエグいんですよ。表情を変えず、やることがエグい…必殺仕事人みたいですよ、的確に仕事させていただきます、葬らせていただきますって感じ」と答えていたが、小川&村上、そして橋本の頭の中ではアントニオ猪木の影響なのか全日本系の選手が"ガチンコ"が出来ないという認識だったのかもしれない。しかし三沢の師匠であるジャイアント馬場は常に見せるプロレスにこだわり、ガチンコ的なものが避けていたものの、決してガチンコが出来ないわけでなく、見せる必要はないと考えており、相手がガチンコ的なものを仕掛けて来たら、対処するいわゆる”護身用”として使っていた。輪島大士との特訓でも、途中からマスコミを非公開にして、”相手がこう仕掛けたら、こう対処する”とシュート的なテクニックを輪島に叩きこんでいたが、決して試合では使うことはなく、馬場から教えを乞うた三沢もNOAHのリングではガチンコ的なものは使わず、自分らのプロレスを貫いていた。

 試合後に三沢は「ぶっちゃけ、頭が使わなくていいから楽だよね、プロレスの難しいところは、闘いながら頭を使わなければならないわけで、あの試合ではそれがないわけだから、気分的に楽だったよ。まあ体の動くままに…みたいな感じだったし、そんなに技術や華麗さにこだわらなくても倒せばいいっていうね」とサラリと答えていたが、馬場は「シュートを超えたものがプロレスである」と言葉を遺したように、まさしく三沢vs小川の遭遇は三沢が「シュートを超えたものがプロレスである」をそのまま実践したような試合だった。

 小川は三沢の命日の前日である今年の6月12日にレスラー、格闘家から引退を表明したが、その間は二度と三沢やNOAHに触れることがなかった。結局三沢の考えるプロレスと小川は相容れないということでネクストがなかったのかもしれない。

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